Lesson 7 のテーマは「スギの適地」です。

 スギはやや湿った土壌を好み、空気を含んだ新鮮な水が近くを流れていればすくすくと育ちます。教科書には、スギの造林適地は山の斜面下部で近くに沢が流れ、水はけの良い土壌、と書かれています。新潟県では東蒲原地方や山北町など古くから林業が盛んに行われてきた地方には、沢に近い斜面下部に高さが40mを超えるような立派なスギ人工林を見ることができます。ところが、スギの適地はスギだけではなく、多くの種類の植物にとっても適地なのです。そこで、人工造林地では、スギにとって競争相手となる植物を人為的に排除(下刈り・除伐)することによって、スギのみが優勢になるように管理が行われるのです。

 しかし、天然スギの自生地は必ずしもスギの適地ではありません。左の写真は、中ノ沢渓谷森林公園の背後に広がる「屋敷岳」山頂付近の天然スギと、斜面下部の沢筋に造成されたスギ人工林です。このように天然スギが尾根筋に群落をつくることができるのは、土壌表面を湿潤に保つ土壌がある場合に限られます。

<杉峰・左端がガマ杉>

<ガマ杉>

 裏五頭・杉峰(下の写真)、笠菅山の天然スギの群落は、深い土壌があるからだと考えられます。

 すでにお話しましたように、表層土壌の攪乱がおきない安定な環境条件下では、ブナを始めとした大きな種子をつくる広葉樹が有利です。沢筋は、スギの成長にとって良好な環境ではあるのですが、自然攪乱など更新の機会がなければスギ自身では生育地を広げることはできないのです。

 右の写真は裏五頭・三階滝沢「ヨドの森」周辺の沢筋の様子です。三階滝沢周辺の天然スギは、かつての洪水や土石流などによって土壌が攪乱された土地に定着したスギが、良好な環境下で巨木に成長したものと思われます。

 左の写真は、裏五頭・三階滝沢「ヨドの森」のさらに奥にある天然杉で、中ノ沢の長老・神田幸一さんによると裏五頭で1番大きいものです。樹齢は優に1000年は超えているものと思われ、このスギも「ヨドの森」と同じく、沢筋から20m程上の河岸段丘状の縁から沢に張り出していました。主幹の中には人1人がすっぽり入れる空洞ができており、周囲の小さな幹・枝は曲がり、「すさまじい」樹型をしています。

 長寿のスギが、沢筋の好適な生育環境のもとで、豪雪に耐えて生き抜く力強さには深い感銘を覚えます。 

Lesson 8

 Lesson8は、「樹木の寿命」についてお伝えします。
 世界遺産として有名な屋久島にある縄文杉の推定樹齢は数千年とも言われています。まさに縄文時代からの遺産であり、日本で最も長寿の生き物の一つと言えるでしょう。しかし、天然杉のすべてが数千年生き続けられるわけではありません。それでは、スギの寿命、樹木の寿命とは何によって決まるのでしょうか?
 樹木の「寿命」は、樹種あるいはその個体が本来持っている遺伝的性質としての生存能力と、生育している環境との二つの因子で決まると考えられています。どんなに生存能力の高い樹木でも環境が適していなければ、長生きできません。逆に、どんなに環境が良くても生存能力が低ければ、長生きできないとも言えます。
 ただ、もう一つの因子も考えておかなければなりません。それは伐採です。スギは良質な建築材で、中でも天然杉は木目の美しさから高価で取引されるために、かつて樹型の良いものはほとんど伐採されてしまいました。しかし、ねじれた幹、2本が合体した幹、あるいは、太い枯れ枝が落ちた後に樹洞ができた幹などは、利用しにくいために伐採されず残されました。縄文杉も切り残されたうちの1本だったのです。